前回までのあらすじ:
ハワイで働く貴司、37歳。
ハワイで語学学校に通う明美、36歳。明美は貴司と初対面にも関わらず

「ハワイは終着駅だと思うんだよね。」と思わせぶりなセリフを貴司に吐く。
話があると持ちかけられた貴司と明美は初めて2人きりのドライブで、
マノアフォールズへ。

http://www.oretachi-hawaii.com/archives/53846758.html


ワイキキからちょっと離れて、彼女がお薦めだというカレーが美味しいと有名の
カフェマハラニに僕たちは入った。

「貴司くん、ここ知ってる? カフェってなってるけど、
チキンカレーが絶品なの。あと、ナン。好きでしょナン?」

「ナンが好きってやつはあんまり聞いた事ないけど、、」

一応真面目に答えると、

「ハハハ、知ってるよ。冗談だよ。Just Kiddingだよ。」

駄目だ、どうも会話の主導権を握られている気がする。

「それでね、貴司君。今日はこの前の続きを話したかったんだよ。
ね、覚えてる。私の悩み?もう一度ハワイで人生を考え直したいというか、
見つめ直したいというか。」

「でね。ちょっと冷静になって、わかったの。ハワイ自体には答えはないって。
だってそうじゃない。ハワイはハワイでしょ。昔から。
何もする義務はないわよね。ただここにある存在だもの。
でも、大前研一しってるでしょ?あの有名なコンサルティングの人。
彼が言ってたじゃない、自分を変えるためには3つしかないって。

・時間配分を変えること。
・住む場所を変えること。
・付き合う人を変えること。

私、結構信じてたんだけど、割と正しいんだなと感じてるだよね。最近。
だって、住む場所変われば、全部当てはまるじゃない。
だからか、なんか悩んでいた自分が薄くなってきて、大分前向きになってきた。」

彼女は一息ついて、自分だけ頼んだバドライトを飲んだ。

「貴司君もそう思わない? 何か変わった?こっちきて」

「うーん、確かにそういわれると変わった気もする。
東京にいた時よりも穏やかになった。
漠然とした焦りがなくなった。
物欲もなくなった。
そういえば、性欲もあんまりない。」

「ハハハ、最後のはよくわかんない。何それ。まだ40前なのに。
ハワイのせいにしちゃだめでしょ。ハワイに失礼。亜鉛とりなよ。亜鉛。
ほら、なぜかナンが先に来たよ。食べよ。亜鉛は入ってないかなー。」


ナン

彼女は手際よく取り分けてくれた。

その押し付けがましくない気遣いはとても心地よかった。
彼女の話しを聞くのも苦痛ではなかった。
そして、ずるいのは、会話内で名前を入れること。
思われているように感じるのはなんでだろう。

その後も彼女はよくしゃべった。あっちこっちに話題がとびながら。

なかなか増えて行かない英語のボキャブラリーのこと。(僕も同じく)
ハワイのあるある(夜のスプリンクラーには気をつけろ!ビチャビチャになる!)
同じクラスのスイス人のイケメン度について(これは同意できなかった)

実際にカレーは美味しかった。
そして彼女とのこの時間を楽しく感じ始めた自分もいた。

「次はどこいこうか?」

ふとした瞬間に、思わずそう聞いた僕がいた。

Vol6に続く。